インバウンド消費が活況を呈する2025年、旅行者の「数」だけを追いかけていては見えない現実があります。
「訪日率」という視点で各国データを読み解くと、日本を訪れる海外旅行者の「質」——つまりリピーターか、それとも初訪問者かという構造の違いが、驚くほど鮮明に浮かび上がってきます。

◆◇香港・台湾・韓国は、すでに「常連客」の国になっている
2025年時点の訪日率を見ると、香港が34.1%、台湾が29.4%、韓国が18.3%という水準に達しています。
これは単純に言えば、香港では人口の3人に1人以上がすでに日本を訪れた計算になり、台湾・韓国でも4〜5人に1人が経験済みという水準です。
統計的に考えると、こうした高い訪日率は一人ひとりが複数回リピートしなければ到達できない数字であり、これらの国々の訪日客の中にはすでに相当数の「常連客」が含まれていると読み取れます。
実際に、香港からは月に一度のペースで訪れるほどの常連客が存在するというエピソードも、この数字の肌感覚を裏付けているように感じられます。
2015年から2025年にかけての推移を並べると、この傾向はより際立ちます。
香港は2015年の20.70%から2025年の34.1%へ、台湾は16.00%から29.4%へ、韓国は7.80%から18.3%へと、いずれも10年かけてじっくりと「常連化」が進んできました。
リピート訪日のたびに新しい体験や上質な滞在を求める層が厚みを増している、ということがデータから伝わってきます。
◆◇中国は「伸びている」けれど、構造がまったく異なる
一方、中国の2025年訪日率は0.64%です。
人口14億人超を抱える中国から2025年に日本を訪れた人は約910万人にのぼりますが、人口比で見ると香港の約50分の1、台湾の約45分の1という水準にとどまります。
数字の上では2015年の0.35%から右肩上がりに伸びてはいるものの、0.64%という絶対値は「中国の人口の99.36%はまだ一度も日本に来たことがない」ということを意味しています。
この構造では、ある年に来日した人のほとんどが「初めての訪日」である確率のほうが統計的に高く、リピーターが積み上がっている香港・台湾・韓国とは根本的に異なるフェーズにあると言えます。

◆◇「常連客」か「新規客」かで、日本の受け入れ体験も変わってくる
訪日率というデータが示すのは、国ごとの旅行者の「素性」です。
リピーターが多い香港・台湾・韓国の旅行者は、すでに定番スポットを知り尽くしたうえで、より深い体験や地域の個性ある食・文化を求めてやってくる傾向があります。
その一方、中国はまだ初回訪問者が主流であり、日本ならではの体験を初めて知る喜びに向き合う市場です。
どちらが良い・悪いではなく、旅先としての日本の魅力をどんな角度から届けるかを考えるとき、この視点は地域の観光関係者や飲食・宿泊に携わる方にとっても、あらためて参考になるのではないでしょうか。
まとめ
訪日客の「数」の裏側に、これほどはっきりとした「常連化」の差が隠れているとは、改めてデータの読み方の奥深さを感じます。
インバウンドの動向に関心のある方は、アセンティア・ホールディングスの公式ブログでさらに詳しい分析をご覧になってみてください。
公式リンク
・公式サイト:アセンティア・ホールディングス
・インバウンド分析レポート:公式ブログ
注釈
[1] 訪日率は年間訪日数を各国人口で割った独自指標。
2025年の各国データに基づく。
[2] 2020〜2022年のデータは国境管理の影響により実態を反映しないため、本記事では対象外としています。
[3] 訪日数・人口データはアセンティア・ホールディングスが独自に集計・分析したものです。