就活の面接前、長袖で隠せるか確認した——そんな経験を持つ方が、この社会には少なくありません。
アトピー性皮膚炎が「肌の問題」にとどまらず、働くことや人生設計そのものに影響を与えている実態を明らかにした調査白書が、今公開されました。
中等症以上のアトピー性皮膚炎の就労者400名を対象にしたこの調査は、数字の奥にある「見えない負担」を丁寧にすくい上げています。

◆◇幼い頃からずっと、症状と歩いてきた
アトピー性皮膚炎患者のうち、小学校入学以前に発症した方が54.3%、小学生の時に発症した方が19.3%にのぼり、あわせて約70%が小学生までに症状を経験していることが今回の調査で明らかになりました。
就職活動の時期に症状があった患者さんは69.8%で、そのうち約半数にあたる47.7%が「就活に影響した」と感じていたといいます。
影響の内容は、見た目を気にするだけでなく、「症状を見せないための工夫」や「職場環境を選ぶ基準としてアトピーを考慮した」など、エントリーシートには書かれない種類の苦労です。
藤田医科大学 ばんたね病院 総合アレルギーセンター センター長・矢上晶子先生は、「幼少期から発症し、就職活動からキャリア形成全般にわたって長年影響を受ける方も少なくない」と指摘しており、この疾患が一時期ではなく、人生の長い時間軸で影響し続けるものであることが見えてきます。
◆◇「集中できない」「ストレスで悪化する」という職場のリアル
半数以上の患者さんが仕事に何らかの影響を経験しており、最も多かった回答は「集中力が落ちた」(65.1%)でした。
次いで「仕事の効率が落ちた」(43.3%)、「仕事に対して自信や意欲をなくした」(25.6%)と続き、症状が実務だけでなく気力にまで影響していることがわかります。
また逆方向の影響——仕事のストレスがアトピーを悪化させる経験をした方は80%以上にのぼり、症状と職場環境が互いに影響し合う悪循環を抱えながら働いている実態が浮かび上がりました。
職場での不安として最も多かったのは「皮膚が落ちる・荒れ・出血など見た目に関する不安」(70.3%)で、かゆみによるイライラが人間関係に影響しないかという不安を感じている方も53.8%いました。
それにもかかわらず、勤務先でアトピー性皮膚炎への支援が「ある」と回答した患者さんはわずか6.0%。
「ない」または「わからない」と答えた方が約94%を占め、治療と就労を両立するための職場環境整備が大きな課題として残されていることがわかります。

◆◇「変えたい」という思いを、情報が支えられているか
95.8%の患者さんが「自分のアトピー性皮膚炎の状況を変えたい」と感じており、新しい治療薬への意向も70%以上が示しています。
一方で、生物学的製剤(注射)やJAK阻害薬(飲み薬)といった新しい治療の選択肢を「知らない」または「詳しくは知らない」と答えた方は約85%にのぼりました。
変えたいという意欲と、手元に届く情報量の間には、まだ大きな開きがある——この白書はその現実を静かに、しかし確かに示しています。


まとめ
「アトピー性皮膚炎は患者さんひとりだけの悩みではない」という患者家族代表の言葉が、この調査の重みをいっそう伝えてくれます。
詳細な調査データや治療に関する情報は、アレルギー情報サイト「アレルギーi」でも確認できますので、気になる方はぜひ一度訪れてみてください。
公式リンク
・アレルギー情報サイト:アレルギーi
注釈
[1] 佐伯秀久ほか. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024. 日皮会誌. 2024; 134: 2741-2843.