エイジングケアの世界で、「老化細胞をどう扱うか」という問いが、じわじわと注目を集めています。
肌のたるみやコラーゲン減少の背景には、老化した細胞が周囲の健康な細胞にまで悪影響を及ぼす連鎖があることが、近年の研究で明らかになってきました。
そんな中、資生堂が20年以上積み重ねてきた再生医療研究から、ひとつの興味深い発見が届きました。

◆◇「老化細胞を除く」だけでなく「良い細胞を増やす」という、新しい発想
資生堂の研究チームが今回着目したのは、「セリ科ハーブ(Coriandrum sativum)エキス」、いわゆるコリアンダーに由来する植物エキスです。
このエキスは、もともと毛髪再生医療の研究過程で毛包を構成する細胞を増やす効果が見出されたもので[1]、エキスに含まれる特殊な脂肪酸が高い生理活性を持つことから、肌の線維芽細胞への影響も検証されることになりました。
実験では、酸化ストレスによって老化が誘導された皮膚線維芽細胞にこのエキスを添加したところ、老化細胞のみにアポトーシス(細胞死)を誘導して除去する効果が確認されました。
注目すべきは、正常な細胞にはその作用が働かなかった点です。
さらに老化細胞と正常な細胞を約半々に調整した環境でエキスを加えると、老化細胞の減少だけでなく、正常な細胞の増加も同時に確認されています。
エイジングが気になりはじめた方にとって、「悪いものをただ取り除く」のではなく「健やかな状態を積極的に育てる」という視点は、これまでとひと味違うアプローチといえます。
◆◇再生医療の現場から化粧品へ——コラーゲン産生にもつながる可能性
老化細胞は、SASP因子と呼ばれるサイトカインや炎症性物質を周囲に放出し、隣接する健康な細胞の機能までじわじわと低下させることが知られています[2]。
今回の研究では、老化細胞が除去されて正常な細胞が増えた環境において、真皮線維芽細胞によるコラーゲン産生が促進されることも確認されています。
コラーゲンは肌のハリや弾力を支える真皮の主要成分ですが、年齢を重ねるにつれてその生成量は減少していきます。
老化細胞の除去と正常細胞の増加という「二重の作用」によってコラーゲン産生の回復が期待できるという点に、この研究の独自性があります。
資生堂はこの技術を「セノリティクス(老化細胞除去)」の先端知見と位置づけており、再生医療と化粧品双方に20年以上携わってきた経験を活かした成果といえます。

◆◇スキンケアの「根拠」を深く知りたい方へ
肌への実感を求めながらも、その背景にある科学的な考え方まで理解したいという方に、今回の研究知見は新鮮な視点をもたらしてくれるかもしれません。
日々のスキンケアを選ぶ目が少し変わりそうな、細胞レベルのエイジング研究の今をぜひ知っておきたいところです。

まとめ
老化細胞を選択的に除去しながら正常な細胞を増やすという、再生医療発想の二重アプローチは、これからのエイジングケアの可能性を広げる研究として注目されます。
詳しい研究内容は資生堂の公式ニュースリリースでも確認できます。
公式リンク
・ニュースリリース:資生堂 [研究発見の詳細]
・企業情報:資生堂 [公式サイト]
注釈
[1] コリアンダーエキスによる毛母細胞・毛根鞘細胞の増殖促進効果は1997年に開発・確認済み(資生堂研究)。
[2] SASP因子(老化関連分泌表現型):老化細胞が分泌するサイトカイン・炎症性因子の総称。
周囲の細胞に悪影響を与え、老化の進行に関与するとされる。