健康経営という言葉が職場にも浸透しつつある今、働く人のアルコールとの付き合い方が、あらためて注目されています。
九州大学と三和酒類株式会社が共同で実施した大規模調査から、飲酒リスクは個人の習慣だけでなく、職種や働き方とも深く関わっている可能性が浮かび上がってきました。

◆◇全国7,500名のデータが示す、飲酒リスクと働き方の関係
九州大学都市研究センターの研究チームは、全国の企業に勤務する20歳以上の社員7,500名を対象に、オンラインアンケート調査を実施しました。
飲酒リスクの評価には、世界保健機関(WHO)が開発したスクリーニング指標「AUDIT(Alcohol Use Disorders Identification Test)」を使用しています。
全10項目・最大40点で構成されるAUDITスコアを分析した結果、飲酒リスクは年齢・性別・収入・職種などと関連していることが明らかになりました。
男性・若年層・高収入層でスコアが高い傾向がみられたほか、職位が上がるほどスコアも高くなるという傾向も確認されています。
特に管理職・経営者ではAUDITスコア8〜14点の割合が他の職位と比べて高く、これは飲酒習慣の見直しや保健指導が推奨される目安とされる水準です。
責任の重さや対人交流の頻度、職場文化など、職位や職種に伴うさまざまな要因が、飲酒行動に影響している可能性が考えられています。
◆◇職種によって異なる飲酒リスク——経営・管理職、物流、営業に高い傾向
職種別の分析では、経営・管理職、物流関係職、営業・マーケティング職でAUDITスコアが高い傾向が示されました。
これらの職種は、業務上の責任の大きさや社内外での対人交流の機会、勤務形態の不規則さなど、それぞれに固有の業務特性を持っています。
研究チームは、そうした職種特性が飲酒行動に関与している可能性を指摘しており、一律の健康教育だけでなく、職種の実態に応じたアプローチの必要性を示唆しています。
本研究成果は、2026年5月29日に開催された「第99回日本産業衛生学会」において発表されており、企業における健康経営や職域でのアルコール対策を考える上で、重要な知見として位置づけられています。

◆◇「自分の働き方」と飲酒習慣を見直すきっかけに
忙しい毎日の中で、仕事終わりの一杯がリフレッシュの手段になっている方も少なくないはずです。
今回の研究は、飲酒リスクが個人の意志や習慣だけに帰するものではなく、職場環境や業務の性質とも関わり得ることを示した点に意義があります。
自身の職種や働き方を踏まえながら、お酒との距離感をあらためて考えてみる、そんなきっかけとして受け取れる研究結果かもしれません。


まとめ
職種や職位という視点から飲酒リスクを捉え直したこの研究は、働く人の健康を考える上で新しい切り口を提示しています。
詳細な研究内容や今後の展望については、一般社団法人飲酒科学振興協会の公式サイトでご確認いただけます。
公式リンク
・公式サイト:一般社団法人飲酒科学振興協会
注釈
[1] AUDITスコア8〜14点は、WHO基準において飲酒習慣の見直しや保健指導が推奨される目安とされています。
[2] 本研究は九州大学都市研究センターと三和酒類株式会社の共同研究で、第99回日本産業衛生学会(2026年5月29日)にて発表されました。